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養鶉儂人 内田 貴士

YOUJUN NOUJIN UCHIDA TAKASHI

東海有機 代表
二部儂人
豊橋市出身
http://www.tokaiyuki.jp

 全国のうずら飼育数600万羽のうち、その7割にあたる400万羽を豊橋が担う。「日本一のうずら王国・豊橋」と呼ばれるゆえんである。各家庭にうずら卵専用のハサミまで置いてあるほど、うずら卵が生活に密着している地域も珍しい。しかし、そのうずら王国・豊橋にあって、食肉用うずらを飼育し、直接加工、販売する儂人は内田をおいて他にない。

 このうずら肉を「こりゃクェール」(クェール"quail"は英語で「うずら」のこと)と名づけ商品化したことを機に、地元飲食店を中心として、全国の料亭、ホテル、レストランなどから注文が届くようになった。フランスでは高級肉として知られるうずら肉が、国内で、しかも日本一のうずら王国・豊橋で生産されていると評判だ。

 平成21年2月、豊橋市内7軒のうずら農家において弱毒タイプの鳥インフルエンザの発生が確認され、安全を期して約160万羽が殺処分された。関係各者の迅速な対応が実り、5月には愛知県から「終息宣言」が出されたが、しかし、しばらくの間、豊橋産に対する風評被害は続き、取引先からの注文数も激減、苦悶の日々が続いた。

 周りが皆、下を向き黙って時が過ぎるのを待っている中、内田は「新たな市場を開拓しなければこの先はない」と、これまでの「卵専門」の経営スタイルから、新たに食肉販売部門を立ち上げ、前へと進む決心をする。

 まだ風評被害の残るその時期に、取扱店を増やすのは無謀の極みに等しい。しかし、それでも毎日、両手いっぱいに商品を抱えながら「豊橋のうずら肉は安全でおいしいです」と、店の前で頭を下げ続けた。そんな内田のひたむきな姿勢に、少しずつ、でも着実に、内田の魂からにじみ出る言葉を信じ、協力に応じる飲食店が増えた。

 養鶉儂人・内田貴士に「逆境」という言葉はない。いや、厳密には、逆境さえ味方につけてしまうほどの広いトレランスの持ち主だといえよう。まさに儂人道、ここにあり。 (黒子儂人 清水)