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豊橋百儂人が目指すもの

愛知県の東端部に位置する東三河地域は、日本一の農業生産額を誇る、我が国有数の大農業王国です。
営農作物の品目だけでも100種類近くあると言われ、単に量だけでなく、種類の豊富さにおいても日本有数の農業地帯と言えます。

豊橋市は東三河地域の中心となる人口約38万人の都市で、「豊」の文字が示す通り、古来より、人、物などがたくさん行き交う潤沢な町として栄えました。
そのため、人材も各分野で豊富にあり、職人気質も高いことから、それに裏打ちされるように多くの優れた職人を輩出しています。

優れた職人気質は農業界においても例外でなく、この地域の「食農」の歴史を築いてきた先人たちは、その優れた知識、知恵、技術、そして不屈の精神で未開の地を開拓し、新しい「食農文化」を創り出してきました。

しかしながら、日本一の農業王国と言われるこの地域においても、農業従事者の数は年々減り続け、優れた農業生産技術やこれまで築き上げられてきた食農文化は大きく崩れようとしています。

私たちは、こうした偉大な先人たちが命がけで守ってきた食農文化を後世に受け渡すことがこの地域を守ることにつながり、ひいては日本全体の食文化を守ることにつながると考えています。

その実現のためには、あらゆる伝統をただ機械的に守るのではなく、悪しき伝統ならば潔く壊し、今の時代に即した新しい「食文化」を創造すべきと捉えています。

このように、良き伝統を守りつつも革新的努力をし続け、「真」の農業経営者となるべく切磋琢磨する生産者を「豊橋百儂人(とよはしひゃくのうじん)」と認定し、これら活動の主旨に賛同してくださる応援者(サポーター)の皆様と共に、生産者、消費者が一体となった活動を目指しています。

「儂」という字に込めた思い

「儂」(のう)という字は、「農」の横にニンベンが付きます。
つまり、多くの人々の支えがなければ成り立たないのが今の農業の実情であり、それを象徴するものとして、「農」ではなく「儂」という字を使っています。

また、「儂」は、「わし」とも読み、古来、村の長老たちは自分のことを「わし」と呼んでいました。それを漢字にしたものが「儂」です。村の中で古老は村人から最も尊敬されていました。「わし」という言葉には周囲に畏敬の念を抱かせる「不思議な力」があったのです。

しかし、現代社会では、核家族化が進むなどし、古老を中心とした村社会ではなくなりました。それに呼応するように、農業そのものも衰退し始めています。
その結果、私たちは人と人とのつながりを無くし、また食べ物を自分たちの力で供給することすら難しい時代となってしまいました。

こうした現代社会の有様に、私たちは農業者という立場から警鐘を鳴らし、今一度、村の古老が尊敬されていた時代を思い出し、見直してみる価値があるのではと提唱しています。
豊かな食を守り繋いでいくために、共に農業を支えて欲しいという思いを込めて、私たちは「儂」という字にこだわっています。

一般的に、農業従事者は「農家」と呼ばれますが、私たちはそれをあえて「儂人」と呼びます。
よく農業はどれも同じだと思われがちですが、実際には作物によってまったく異なる業種です。
また、同じ作物であっても、作り手によって様々な農法が存在します。つまり、農業は一緒くたなものではなく、実に多様性に富んだ業種といえるのです。

私たちは、そうした「農業の多様性」を互いに認め合い、農業者を「家」という単位ではなく「人」という単位で認識し、「個の素晴らしさ」に焦点を当てたいと考えています。

そのことによって、農業王国・東三河が、農業生産高日本一というだけでなく、さらに「農業の多様性」にも富んだ、実に素晴らしい地域であるということを多くの皆さんに知っていただくきっかけになると確信しています。

185項目以上の評価・認定基準

豊橋百儂人の評価・認定基準はなんと185項目以上もあります。
それらを大きく分類すると、次の3つの柱からなります。

  1. 個、つまり自身の情報を自らの力で発信していること。
  2. 一農業者として、人間として、偉大な先人に恥じない「生き方」を貫き、後進の手本となるよう絶えず努力していること。
  3. 率先して消費者との絆作りを意識し行動していること。

すでにこれらを理解し、実践していることが豊橋百儂人認定への最低限のノルマとなります。
しかしながら、私たちの活動の本質は「認定を与える」ことではありません。
百儂人として認定を受けてからが、本当の意味でのスタートなのです。

内部競争を促す「三部制度」「ランキング制度」はサポーターとの絆作りのため

百儂人は、サポーターと呼ばれる消費者の皆様から時に厳しい視線にさらされることで、単に生産するだけでなく、販売・サービスなどといった面でも一流の生産者として自己を磨かねばなりません。
より優れた儂人とそうでない儂人とがいつまでも同列に扱われるのは、サポーターの立場から見ると健全ではありません。

そのため、豊橋百儂人では「三部制」を基本的な組織システムとして考えています。
具体的には、作物の種類や農法などを問わず、すべての生産者が、一部、二部、三部(白儂人)に区分されることで、積極的な自己研鑽を促し、組織内競争を引き起こそうとするねらいがあります。

原則として「一作物一儂人制」ですが、もし同一作物に2名以上の儂人が認定された場合にも、その作物内における一部、二部という区分を適用し、同一作物の生産者同士の競争意識を高めていきます。

儂人ランクを決定するための判断材料として、最も大きなファクターとなるのは、自己評価と公認サポーターによる客観的評価です。

こうした取り組みは、生産者からすると大変窮屈なことです。しかし、それが誰のための「生産」なのかを考えれば、答えは明確です。言うまでもなく、食べてくださる方あっての「生産」であり、消費者から見てより健全な生産者となるべく自己を向上させることは、何をおいても必要不可欠なことと考えます。

豊橋百儂人認定の農業経営者たちは、そのことを十分に理解し当活動に参画しています。
したがって、私たちの活動の一端をご覧いただくだけでも、いかに「農業を極め、貴重な食の遺産を守り、新しい食農文化を創り上げていくか」に力を入れ、真摯に「農」に対し向き合っているのかをご理解いただけると信じています。

この貴重な食農文化を守るために

私たちは、この貴重な東三河・豊橋の農業、食文化を守るために、生産者、加工者、販売者、消費者それぞれがそれぞれの立場でできる範囲で、少しずつ負担し合うことが重要と捉えています。

百儂人を応援してくださる方々の多種多様なご要望に常に耳を傾けながら、環境に配慮した持続型営農を実践し続けることは決して容易なことではありません。
常に現状に満足せず、情報アンテナを張りめぐらせ、得たものを実践し、自身を進化させ続けなければならないからです。

しかし、そうし続けなければ、いわゆる安心、安全かつ美味しい農産物を作り続けることなど到底できません。昨今、食に関する不祥事が続き、我が国の食の安全神話は崩れつつあります。だからこそ、これまで以上にさらにひたむきに消費者と向き合い、細かなニーズにも応えていく姿勢が必要となってきているのです。

今や時代はものすごいスピードで流れています。そんな中、儂人に求められるニーズも刻一刻と変化しています。その一つ一つに対応するためには、事実として多くのコスト(時間、体力、金銭など)が必要となり、現状はすべて生産者の自己負担です。

生産者が「体力」のあるうちは、それでもまだ何とか続けていくことができるでしょうが、やがてその貴重な儂人の一人が、農業人生に幕を下ろし別の道を模索する時がいつ来ないとも限りません。
真剣に食の安全や、食べてくださる方々のことを考え行動してきた生産者が農業を続けていくことができない、そんな社会に子どもたちも未来を期待できるでしょうか?

全国を見渡すと、専業農家の数は年々激減しています。もちろん、豊橋も例外ではありません。現在の農業従事者の多くが高齢であることを考えると、10年後どのような状況になっているか想像に難くありません。今以上にさらに深刻な事態に直面することは目に見えているのです。

そこで、私たちは、サポーターの皆様をはじめ、この地域の食農文化を守りたいと応援してくださる方々のための「ファームドクター」として頑張っていきたいと考えています。ファームドクターとは「ホームドクター」をもじった造語で、「医食同源を提案する儂人」のことを示します。

ほんの少しでも構いません。
私たちファームドクターから直接食べ物を買っていただくことが、この地域の食農文化の大きな支えとなります。その結果、消費者にとってより意義のある食農文化が創造され、守られ、ひいては住みよい地域となっていくはずです。

地域の食農文化を守り続けるということは、それほど難しいことではありません。サポーターの皆様をはじめとする消費者の方々に、この地域の農産物を買い支えていただくだけなのです。

もちろん、私たち儂人も、自分の作っている作物以外は購入する必要があります。つまり同じ消費者の一人ということです。
私たちもまた、この地域の安心、安全かつ美味しい生産物を買い支えるサポーターの一員として、恒に努力し続けていきたいと考えます。

「儂人道」とは

最後にもう一つ、豊橋百儂人を知っていただく上で欠かせないのが「儂人道」です。
儂人道とは、真の農業者として、食農の道を極めることと定義付けています。

儂人道を極めるにはどうあるべきか。
自己の思い描く理想に少しでも近づくために、今、そしてこれから何をなすべきか。
つまり、儂人それぞれの思い描く「儂人道」を知っていただくことで、より深く豊橋百儂人の活動の本質を理解いただけると思います。

活動開始から10年が経過した豊橋百儂人。これからも進化し続けていきますので末永くご支援をお願いできますと幸いです。